短編:竹取の物語

今は昔。

2000年8月29日の大阪のとある山に竹取という名前のおじいさんがいました。

「おや?ピカピカ光っている竹がありますねぇ」

おじいさんは、不思議に思ったものの好奇心に負けて竹を斬ることにしました。

「竹割り!」

おじいさんはそういって高くジャンプし竹を縦に斬ったのです。

すると竹は爆発し。

中には小さな女の子が座って号泣しながら震えていました。

「子どもか?」

「パネェよパネェよ……

 この国では縦に斬るのが普通なの??」

おじいさんは女の子に当たる直前で竹割りを止めたのです。

「娘よ。名はなんと申す?」

「かぐやです……」

「どうして竹の中に?」

おじいさんの質問にかぐやは首を横に振ります。

「そうか、怖い思いをしたんだな」

(怖いのは今だけどね)

「さて、どうする?警察に届けるか?」

「まぁまぁなんて可愛い子でしょう」

おばあさんが近づいてきます。

「婆さん」

「この子を連れて帰りましょう」

「誘拐になるぞ?」

「ちゃんと手続きはします。

 警察にも先程連絡を入れました。

 とりあえずは、保護しましょう」

おばあさんの提案におじいさんは頷きました。

警察の調べなどの結果。

かぐやは無国籍の子どもでした。

警察での失踪者の照合や法務局での行き手続きなどなど。

時間は少しかかりましたが。

おじいさんとおばあさんは晴れてかぐやの両親になることができました。

それは、かぐやの4歳の夏の出来事でした

それから10年が過ぎました。

かぐやにアイドルのスカウトが来ました。

かぐやは言います。

「私、アイドルになりたい」

するとおじいさんは言います。

「甘い世界じゃないぞ?」

「わかってる」

おじいさんは優しく微笑みます。

「がんばるんだぞ」

「はい!」

かぐやはアイドルフループに選抜されあっという間に人気者になりました。

でも、そのしあわせにヒビが入ります。

ある週刊誌にかぐやが捨て子だという情報が売られたのです。

そしてそこからおじいさんやおばあさんの生い立ちまで調べられました。

そしてそこでかぐやは衝撃の真実を知ります。

かぐやが引き取られる少し前。

おじいさんとおばあさんの孫娘が亡くなっていたのです。

おじいさんとおばあさんの娘は病弱でその孫娘を生んだ直後に亡くなりました。

娘の旦那はDVを繰り返しあるとき別に女の人を作り出ていったそうです。

おじいさんもおばあさんもかぐやにそのことを何度も伝えようとしました。

でも、それはできませんでした。

かぐやは尋ねます。

「私は、その子の変わりだったのかな?」

「それはないわよ」

おばあさんがそっといいます。

「でも、テレビとかであるじゃない?

 亡くなった子どもの代わりに戸籍を入れて……

 その娘のようにして私を育てるとか」

「そんなことはしないわよ」

「そっちのほうが楽なのに?」

「しないぞ」

おじいさんは穏やかな顔で言います。

「どうして?」

「それをしてしまったらあの娘の存在意義がなくなってしまう。

 それにかぐやはかぐやとしての人生を送ってほしい。

 そう思ったからだ」

かぐやは涙を流します。

「私、邪魔じゃなかった?」

それはかぐやはずっと思っていたことです。

自分の存在が邪魔じゃなだのではないかと。

「しあわせだよ。

 今も昔もな

おじいさんはそういってかぐやの頭をポンポンとなでました。

「ごめんね、ごめんね、本当にごめんね」

「謝る必要はないわよ」

おばあさんはそういってかぐやを抱きしめました。

かぐやはアイドルを辞めます。

18歳。

通信制高校に通い卒業し大学に入学して。

コンビニでアルバイトをしながら無事に卒業しました。

22歳。

卒業と同時に妊娠がわかります。

「おじいちゃん、私妊娠しちゃった」

かぐやの言葉におじいさんは胸が痛みます。

でも、かぐやを否定しません。

娘とは妊娠をきっかけに大きな喧嘩をして亡くなる少し前まで連絡をしませんでした。

もっと早く連絡をして娘との時間を作ればよかった。

それが唯一の心残りです。

だからそれを繰り返さない。

そう誓ったのです。

「酷い男じゃないんだね?」

おじいさんはかぐやに尋ねました。

「凄くいい人だよ」

「そうか、ならよかった。

 子ども。大事に育てるんだぞ?」

「うん、ありがとう。

 本当にありがとう」

「かぐやは本当に泣き虫さんだな」

おじいさんは、そういって優しく笑いました。

「……ありがとう、ありがとう、ありがとう」

かぐやは何度も何度もお礼を言いました。

2020年8月28日。

かぐやの結婚式が開かれました。

かぐやの腕には赤ちゃんが抱かれていました。

おじいさんもおばあさんもしあわせ。

あかちゃんも旦那さんもしああせ。

みんなみんな仲良くしああせにくらしました。

これは竹取のおじいさんとおばあさんとかぐやの物語。

-おしまい-

人生に悩む猫の住処-すみか-

流れるままに。 気まぐれにお話を書いています。

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