権力を持った7月

2022年7月12日

暑い。

毎日が暑い。

朱里絵「ああ、7月、7月 !

 なぜあなたは、7月様でいらっしゃいますの?

 暑さと縁を切り、真夏をお捨てになって!

 もしもそれがお嫌なら、せめてわたくしを涼しくなると、お誓いになって下さいまし。

 そうすれば、わたくしもこの場限りでクローゼットZの名を捨ててみせますわ」

7月「さて。声をかけようかかけまいか……」

朱里絵「わたくしにとって敵なのは、あなたの名前だけ。

    たとえ真夏の人でいらっしゃらなくても、あなたはあなたのままよ。

    真夏日――それが、どうしたというの?

    手でもなければ、足でもない、腕でもなければ、顔でもない、他のどんな部分でもないわ。

    ああ、何か他の名前をお付けになって。

    名前にどんな意味があるというの?

    暑さという日にどんな名前をつけようとも、セミが鳴くことに変わりはないはずよ。

    7月様だって同じこと。

    7月様という名前でなくなっても、あの神のごときお姿はそのままでいらっしゃるに決まっているわ。

    7月様、そのお名前をお捨てになって……

    そして、あなたの血肉でもなんでもない。

    その名前の代わりに、このわたくしのすべてをお受け取りになって頂きたいの」

7月「お言葉通りに頂戴いたしましょう。

  ただ一言、僕を恋人と呼んでください。

  さすれば新しく生まれ変わったも同然、来月からはもう、7月ではなくなります」

そんな朱里絵と7月の物語。

そんなセリフが頭をぐるりと回ってすぐに忘れる。

そう。俺は疲れているのかもしれない。

人生に悩む猫の住処-すみか-

流れるままに。 気まぐれにお話を書いています。

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