童話:僕はもうすぐ死ぬらしい

物語:僕はもうすぐ死ぬらしい

 作:おねこ。

僕はもうすぐ死ぬらしい。

僕がひとりで眠るベッドの上。

ドン!

って大きな音がした。

すると子供が立っていた。

僕よりも小さな歳の女の子。

そして僕に言ったんだ。

「はじめまして」

僕は怯えながら頷く。

「はじめまして」

「私は……死神様のお使いで来たの」

「お使い?」

「あと11ヶ月したら私に会えるよ」

女の子の目は真剣だ。

「今は会ってないの?」

僕は思った。

僕は気づいた。

そうか、僕は11ヶ月と少しで死ぬんだ。

そう思った。

自分の人生は僅か6歳。

6年しか生きれていない。

それでも僕は死ぬんだ。

僕は覚悟を決めた。

死神の使いが去ったあと。

僕は部屋の掃除をした。

散らかった状態で部屋を見られたくないから。

だから僕は残りの時間を犠牲にして綺麗を取り入れた。

残された僕の命はあと10ヶ月28日。

思ったより時間が掛かってしまった。

そして死神の使いは今日も現れる。

「やぁ。

 また来たよ」

明るく元気に死神の使いは、笑っている。

僕は楽しくない。

朝、学校に行くと上履きが無くなっていた。

いつものことだ。

昼、僕だけ給食が用意されてなかった。

夕方、運動靴が無くなっていた。

いつもこう。

毎日こう。

だから死ねるのならそれでいい。

死ぬってことは苦しみが消えるってこと。

だからいい。

だってもう終わるのだから……

この苦しみが。

僕には生まれつき顔に痣がある。

そのせいで周りから気持ち悪がられる。

だからいいんだ。

終わるんだから。

もういいんだ。

終われるんだから。

早くこの苦しみが終わりますように……

そんなある日。

お母さんのお腹が大きくなった。

最初は食べ過ぎだと思った。

でも、そうじゃない。

日に日に大きくなる。

そして時折苦しそうに食べたものをもどした。

ってことは、これは食べ過ぎなのか。

でもお腹を痛そうに押さえている。

僕はネットで調べてみた。

胃に穴が空いてその穴から出る病気があるらしい。

心配になった。

でもお腹に生命が宿り。

お腹を突き破って出てくる漫画も出てきた。

怖い。

僕が死ぬのはいいけれど。

お母さんには死んでほしくない。

僕は泣いた。

毎日泣いた。

「やほ、あと6ヶ月でちゃんと会えるよ」

死神の使いが元気に現れる。

「死神さん、お母さん死んじゃうの?」

「人間だからね。いつかは死ぬよ」

そんな答えが欲しいんじゃない。

「今日は夢の中で空を散歩しよう」

死神の使いがそういって笑う。

それを聞いた僕はそのまま眠る。

目を覚ましたとき。

僕は空の上にいた。

「え?あ?夢?」

僕はそっと呟く。

「そうだよ、夢散歩だよ」

僕は空に浮いていた。

「歩けるの?」

「夢だからね」

僕は恐る恐る足をすすめる。

「歩ける!凄い!」

「というか君、さっきまで空に立っていたからね」

「わわ!凄い!」

「はい、聞いてないね」

僕は空の上から無数の光を見た。

「わー」

僕は思わず声を出す。

「これは全て人の光」

「人の光?」

「命の数だけこの光があるの。

 ひとつひかりが消えるということはひとりだれか死ぬということ。

 ひとつひかりが増えるということはひとりだれか産まれるということ。

 世界中の人がみんなそれぞれ輝いているんだよ」

「僕の光はあるの?」

「もちろん!」

「見れる?」

「探せばね」

僕は夢中になって光を探す。

毎日毎日寝ては夢散歩。

でも、なかなか見つからない。

お母さんのお腹は大きくなってつらそう。

でも、なぜだか嬉しそう。

「……君とこうして会えるのは今日で最後なんだ」

「え?」

僕の頭が真っ白になる。

友だちと思っていた。

友だちになれたと思っていた。

「私の最後の光を見てて」

死神の使いがそういって目の前に電球を出す。

「ついたり消えたりしてるでしょ?

 これが私の光」

「……うん」

「君は自分の光がどこにあるか本当に気づいていない?」

「わかんないよ。

 もう何万個もみてるのに見つからないんだ。

 飢えて消える光もみた。

 さっきまで輝いていたのに急に消える光。

 消えたはずなのに雷のように輝き出す光。

 でも見つからないんだ。

 僕の光が」

「そっか」

「もしかして、僕は光ってないのかな?」

そう思った。

「君は気づくべきだよ」

「え?」

「君は誰よりも輝いている」

「だって……じゃ、それじゃどうして僕の光はないの?」

「君は探すときどこを見ている?」

「前とか右とか左とか」

「そっかもっと見える場所あるでしょ?」

「あ!足元!」

死神の使いがニッコリと笑う。

そして僕は足元を見た。

でも何もない。

「光ってないよ。

 ないよ、僕の光」

死神の使いが優しく微笑む。

そして僕の肩をポンポンと叩く。

「君さ」

「うん」

「自分を探したかい?」

「え?」

「君は誰よりも輝いている」

死神の使いはそういって姿を消した。

僕の目はそこで覚めた。

「おや起きたようだね」

お父さんが僕を背負っている。

「あれ?僕……」

「君はもうお兄ちゃんになるんだぞ」

「お兄ちゃん?」

「妹が産まれたよ」

「え?」

僕は驚いた。

「お母さんがね。

 君を驚かせようとしてたんだ。

 その様子だったらドッキリ作戦大成功だね」

お父さんがケラケラと笑う。

そして病院に着いた。

お母さんの隣には赤ちゃんがいた。

それから10年が過ぎた。

僕はまだ生きている。

でも、僕は僕の光をまだ見つけれていない。

でも思うんだ。

その光を見つけることが僕の宿題なんだと思う。

ただ気づいたことが一つだけある。

妹の笑う顔があの死神の使いに顔が似ている。

声も似ている。

きっとそれはそういうことなんだろうと僕は思う。

-終-

人生に悩む猫の住処-すみか-

流れるままに。 気まぐれにお話を書いています。

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