ツンデレサンタ

物語:ツンデレサンタ

 話:おねこ。

 僕はクリスマスは嫌いだ。

 兄弟は居る。

 だけど、皆、優秀だからクリスマスの日は仕事に出る。

 と言っても、今は別々に暮らしているから関係ないか。

 一年の中で、クリスマスは僕だけが一人ぼっち。

 みんな、サンタと一緒に仕事か、恋人や家族といる。

 と言っても、居たら居たで虐められるだけだしね。

 僕は、部屋を出て空を見上げる。

 そこには、沢山の星が輝いていた。

 少し歩こう。

 僕は、白く輝く道を歩く事にした。

 冷たい道を白い息を吐きながら歩く道。

 冷たくて、またそれが心地良い。

 僕は人に見つからないように、静かに走った。

 僕の鼻は赤い。

 赤いからといって特別な事なんて一つも無い。

 差別の対象になるだけだ。

 僕が走れるのはクリスマスの誰もいない夜だけ。

 そう言う意味では好きなのかも知れない。

 僕は、崖を飛び越える。

 冷たい風が肌を刺激し、身軽な身体が宙に浮く感じはまるで……

 空を飛んでいるような感覚がする。

 トナカイが空を飛べると町に噂が立ってしまった事があったな。

 あれは僕が崖を飛び越えた姿を人に見られてしまったからなんだ。

 そして僕はクリスマス以外、道を歩く事を禁止されてしまったんだ。

 僕は色々な事を考えながら走った。

 走って、走って、走った。

 20キロくらい走った時、僕は鋭い鞭で打たれた。

 僕はびっくりしてこけてしまった。

「トナカイ見っけ」

 僕が振り返ると、底には真っ赤な衣装を着た女の子が、仁王立ちで構えていた。

 その足元には、白い大きな袋が置かれていた。

 誰?サンタさん?

 でも、サンタは正体を隠すため、全身黒い服のはず。

 赤なんて、あんな目立つ姿、ありえない。

 僕は震える足腰を持ち上げると。

「誰ですか?僕の鼻が赤いからそんな事をするのですか?」

 僕は花が赤い為、猟銃で撃たれた事なんていっぱいある。

 それなのなら、理解できる。

 赤い服の女の子は、口を開けた。

「あなた、私のソリを引きなさい!」

 あぁ、やっぱりサンタなんだ……

「あのね……

 僕は君のことあんまり知らないんだけど?」

 僕は普通の会話をしたつもりだった。

 だけど、女の子は手を腰に当てて、僕に怒鳴りつけた。

「イヤなの?乗せるの?どっち!?」

 僕は反射的に乗せると言ってしまった。

 公に街を歩けるのならいいか……

 僕は、そう納得する事にした。

 彼女は、僕に荷物をつけると、ソリに乗り手綱を引っ張った。

「てっきり、その鞭で叩かれると思ったよ」

 僕がそういうと彼女は、手綱を強く引っ張り

「なに?叩かれたかったの?」

 僕は何も言えなかった。

 暫くの無言の中、彼女の方が先に口を開いた。

「あなた、名前は?」

「僕は、ルドルフ。君は?」

「私は、ミラ=ニコラ=ニコラウス。

 ミラで良いわ」

「わかった。

 じゃ、ミラはやっぱりサンタなの?」

「貴方には私が何に見えて?」

「サンタクロース……

 でも、サンタが赤い服だなんて、目立っちゃうよ……」

「黒い服なんて、喪服みたいでやーよ。

 赤いほうが可愛いじゃない」

「そ、そうだね……」

 僕らは、たわいも無い雑談を交わしながら、街に行き、プレゼントを子供達に渡して歩いた。

 しかも、手渡し……

 ミラ曰く、煙突から入ったら、赤い服が“すすまみれ”になるし、足跡が床について大変らしい。

 子供にばれないように進入するには、かなりの労力が必要らしいんだ。

 よくよく考えたら、男のサンタは体重が120キロ必要なはず。

 だから、みんなどうやっているんだろ……

 余談だけど、ミラがこんな目だった服装で、こんな行動をしてしまったものだから、いつしかサンタは【赤い服】と言うイメージがついてしまったんだ……

 僕たちは、それから毎年一緒にペアを組んで子供たちにプレゼントを渡している。

 サンタは毎年、僕にこう言うんだ。

「か、勘違いしないでよね!

 暗い夜道は、ピカピカのアンタの鼻が便利なだけなんだから!」

 僕は毎年あきれて苦笑いをするんだけどね。

 さて、君たちの所にも、もう届いたんじゃないかな?

 僕たちが届けたプレゼントが……

人生に悩む猫の住処-すみか-

流れるままに。 気まぐれにお話を書いています。

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